マイペース・ラノベ・トーク

本屋行ってきました.買ってきたのはこれ.



    

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)


俺オワタ(むしろハジマタ).



いやー,なんつーかね,言い訳っぽいですけど今までワタクシはライトノベルを読んだことがなかったのですよ.ファンには失礼ながら軽く見てたというか.今でも自分の好きな作家はドストエフスキーとか,安部公房とか,芥川龍之介とか,大江健三郎とか,村上春樹とか,司馬遼太郎とかもう本当に丸っきり王道の文学青年フラグですな.でもその一方でオタクの土壌を形成するほどのSF好きでもあったから,ハインラインアーサー・C・クラークは殆ど読み漁っていたです.
教員やってると授業の前なんかに生徒が小説読んでるのさ.「何の本読んでるの?」って聞けばその殆どが萌え系の表紙のライトノベル.その度正直少しガッカリしていた.漫画の延長でしか自分がラノベを捉えていなかったのがその原因ですね.でもラノベでも何でもそれが中高生の活字離れの防波堤となることは充分理解していたのよ.だから生徒が楽しそうに読んでいるそれを自分も読んでみようと思った.そこまで生徒の興味を持つものに自分も興味を持ったし,あっという間に読み終わってしまう漫画よりは少し時間的に楽しませてくれるだろうと高をくくってね.ところがどっこい面白かったと.知らないってことはそんなものですよね,得てして.
乙一西尾維新の何冊かを読んだけれど,元来のSF好きもあって自然にその世界に入り込むことができました.そして複数の作家の作品を読んでみて感じたことは,各々のキャラがきちんと組み立てられているんだなということ.これは素直に感心しましたよ.アニメにしても漫画にしてもその基本路線は外していないから,ラノベも同様に感情移入がしやすいんだね.そして挿絵もかわいいから世界観を取り込み易く脳内でイメージしやすい.これは思春期の情操教育にはもってこいだと思います(別に何でも教育的効果に繋げようとは思ってないけどさw).ま,そういうわけでワタクシのラノベに対する偏見は完璧に払拭されました.
そこで涼宮ハルヒですよ(しつこい).この作品にはラノベを読み,そこから何かを求めている人の「何か」の大部分が集約されていると理解しました.すなわちそれは読み易さであり,活字に触れるという安心感であり,SFであり,ミステリーであり,萌え・ツンデレ等の感情移入しやすいキャラクターであり,801・18禁等の2次創作と妄想のし易さであり,自分の果たせていない(果たせなかった)充実しっぱなしの学園モノであるわけです.これには長く続いている業績の不信から脱却すべくその方向性を模索していた出版業界・音楽業界・アニメ業界がほっとくわけないですよ.当然のようにメディアミックス戦術に打って出て,多方面からの多大な情報量によって更なる購買層を獲得できる…という現在はそういう流れなんですね.
でも別に僕はその流れを否定しないですよ.娯楽ってそもそも自分が楽しむものじゃない? 楽しいものが安価で得られるならそれに越したことはないのです.ただ,自分が知っているもの,それ以上に楽しいものがあってもその存在に気付かず,当然のように触れる機会がないのならこれほど勿体ないことはないです.だから僕はラノベを読むのと同じように,重厚なロシア文学にも触れてほしいと思うのよ.そういえば最近は新訳の『カラマーゾフの兄弟』の売り上げも好調なようですね(ドストエフスキーかわいいよドストエフスキー).たくさんの選択肢があってこそ,はじめてそのものについて議論ができるのであり,本当の意味での個人の好みも厳選され確立していくのではないでしょうか.