ルサンチマン

久しぶりに漫画を買いました.
  

ルサンチマン 4 (4) (ビッグコミックス)

ルサンチマン 4 (4) (ビッグコミックス)

・・・叩きのめされました.
これタイトルもものすごくいいです.そしてオタクの皆さんに是非読んでもらいたい.つーか嫁.
30歳になる印刷工場に勤める主人公の坂本たくろーはデブハゲ素人童貞.そんな彼はあるとき友人の越後からギャルゲーを勧められる.最初は断るものの現実の女性に相手にされることはなく「本日をもって現実の女をあきらめましたっ!!!」という言葉と共に,最新鋭のバーチャル恋愛シュミレーションの世界に足を踏み込む,が・・・という話.
もう本当にそれだけで号泣なんですが.
一般的なモテないオタクを対象とした現実逃避の漫画・小説・ギャルゲーその他萌え産業の搾取アイテムは,ヘタレの主人公がなんだかしらねーけどカワイイ(ロリっぽい)女性(少女?)から一方的に好かれて・・・という王道を歩むものなんだけど,この漫画はそういった既存の搾取品とは一味も二味も違うのです.まず主人公のスペックが酷すぎる.そういう搾取品は「モテない主人公」を歌いながら実際は見るに耐える(普通にカッコいいんじゃない?)っていうレベルだよね.なぜなら読者の分身である主人公がビジュアル的にあんまり酷すぎるとリアルすぎてバーチャルな世界に入り込めないから.でもこの作品は違う.現実を現実として読者に直視させる.「このきったねえ主人公はお前とどこが違うんだ?」と.
だからこの作品は残念ながら連載が打ち切られたんですよ.現実を直視できない(したくない)読者はわんさかいたと.単行本は上に貼り付けておいたリンクの4巻でおしまいです.全くオタクはもうバカじゃねーのと.お前ら現実と戦えと.当然萌え系の漫画だからバーチャル世界のヒロイン月子や現実世界のヒロイン長尾ときったない主人公はイチャイチャするわけですが,それでも読んでいる方は強烈な痛みが襲ってくるわけよ.カッコ悪い主人公が自分をいやがおうにも現実世界に引き込ませる.その手腕が見事であるなと.
今ワタクシは猛烈に腹がたっているわけです.それもこれも劇場版ヱヴァンゲリヲンのせいです.だってあれヒドクネ? あんだけ「逃げちゃダメだ」「気持ち悪い」とかココロの壁とか同人の学園物パロディとかでオタクどもをバカにしておきながら,それでもまだリサイクルしてそのオタクどもから搾取しようという庵野の魂胆.そしてそれをまた確実に観に行くであろう自分の不甲斐なさ.それに比べてこの『ルサンチマン』のなんという潔さよ.
漫画や小説,映画に求めることは人それぞれだとは思うけれど作品から現実世界に戻ったときの爽快感の比重って概して高いよね.その点から見ても『ルサンチマン』は抜群の後味です.いや,痛いんだよ.でもその痛みがあるからこそ,内面に引きこもるような自己完結を許さない作者のメッセージ性の高さを感じるのです(これホントに長編デビュー作なのかね?).現実よりもバーチャルの優位性を語る主人公の友人越後は確かにカッコいい.でも世界を救って彼は一体どうなるのか? そこを饒舌に語らないラストも素晴らしいと思う.そして最終4巻の表紙の彼女は誰で何をしているのか,そこまでを自分で気付くと,読了したときに思わず涙を流した読者がいたことも納得できる.
本当に素晴らしい作品.現実逃避のモテない男に是非読んでもらいたい作品だ.