夏休み読書(その7)『すいかの匂い』-江國香織

 すいかの匂い (新潮文庫)

 うわぁ、なんじゃこれは。
すごい消化不良です。短編集なんだけど全て主人公の女の子の年齢設定が小学生。
もうその時点でえらく感情移入能力の限界きてます。そしてこれは僕の想像(妄想)なんですけど、
主人公の女の子が全員作者の江國香織っぽく見えてくるのは気のせいでしょうか? 
勉強できたりできなかったり、いじめられっこだったり、お父さんがいなかったり両親と仲良かったり、
全員違うはずなのに、みんな同じ女の子に見えてくる、これも不思議。
で、物語は短編だから違う話に移るんだけど、どうしても前の話を引きずっていて
(まぁ、主人公の年齢設定とか作者の文体もあるんだろうけど)激しく違和感を感じるのです。

 しかし女性には江國香織ファンがわんさかいるのもわかる気はしますよ。こういう
「あぁ、私もむかしこうだった」っていう話ってウケるんですよね。小さいときの経験。
自分しか知らない(そしておそらく自分も忘れてしまっている)「あの夏」に感情が移り切って
しまっているのです。だからそれが感線に触れるというか、そんな感じ。勝手な想像ですが、
『すいかの匂い』が好きな人は江國さんの文章に惹かれているというわけではなくて、江國さんの
文章から思い起こされた(あるいは捏造された)自分の記憶を呼び起こすことによって、
ある種の心地よさを感じているのだと思います。別に「つまんねー」とかそういう本ではないですよ。
だけど僕にはちょっと物語に浸れなかったな。
女の人に生まれていたらまた少し受け取り方が違っていたのかもしれません。